これまで幻の歌謡であった今様の譜面が発見されたとの論文が『国語国文学』誌上で報告されました。
当研究所では、以前より白拍子のみならず今様にも触れてきた経緯があり、当該論文の内容を把握しておくことは、研究所の活動内容に適うものと思われます。
よって、勉強会にて一度当該論文を取り上げて精読いたしました。
簡単にまとめると以下のようになります。
後白河院(一一二七~一一九二)の今様口伝書『梁塵秘抄口伝集』によれば、藤原師長が今様を琵琶の譜にて作ろうとしていたことから、今様が琵琶譜化されていた可能性があるといいます。『諸調子品撥合譜』は、この今様の琵琶譜化されたものに該当します。
以下、この論文は『諸調子品撥合譜』に収録される足柄三首「関神」「瀧水」「恋者」および物様一首「権現」の詞章分析を中心に今様について述べる体裁となっています。
今様・足柄は大曲とされ、今まで詞章が明らかになっていませんでした。
この今様・足柄は、足柄にいた傀儡によって伝承されたと考えられ、青墓傀儡・乙前を経て後白河院に伝わった可能性があります。
詞章分析により、足柄は囃子詞「よな」を基点として展開していくものであること、関のモチーフとゆるやかに関わること、遊女などの立場から読まれた恋の歌であるということがわかりました。
当該論文の内容は、以上の通り詞章分析を主としています。私たちの主眼は、今様をうたい白拍子を舞うことにあるとはいえ、当時の芸能の詞章内容を把握することも正統な活動をする上で大変重要なことだと認識しております。
今回の論文を踏まえて、芸能を磨いていきたい所存でございます。
皆様どうぞよろしくお願い致します。
茱萸 書