若き所員たちへの大きな期待―所長からの応援メッセージ
今様白拍子研究所という団体が発足して3年近くなり、その所長を仰せつかっているが、その活動内容に関しては頗る認識不足であった、ということを吐露しなければならない。それを過日の相談会で知らされた。「活動記録がフェイスブックに載ってますよ」と云ってホームページのアドレス(URL)とやらを教えてもらった(がんらいホームページなるものを殆ど目にしない)。早速にパソコンで開いてみると、あるわ、あるわ…、思わず声を発してしまい、驚きを隠せない。
研究所が主催する会は、大学院を終え研究職に身を投じて間もない人たちを中心に、一芸に秀で人生経験豊かな方々が支援する形で活動を行っている。つまり仕事を持ちながらの活動ゆえ、宇治の松殿山荘(12世紀後半の関白藤原基房の山荘跡)での今様合、北野天満宮における曲水の宴での白拍子奉納をはじめ数ヵ所での挙行で手一杯か、と思っていたのである。ところが、毎月の勉強会に加え、名古屋では白拍子講座を行い、白拍子の舞、歌(新曲制作)、ファッションを取りあげ、静御前、千手前、仏御前といった人物論にも及んでいる。時には20名を越える聴講者が集まるという。公演ということでは、雅楽とのコラボ「越天楽今様」、NHK文化センター、ホテル、高松栗林公園観月会、寺社など多方面に赴いている。一方でテレビ・ラジオ出演も熟している。
「今様」とは、平安後期に流行した歌謡であり、当世風、という意味から察せられるように、和歌のような定型がなく、自由な歌いぶりでの妙味を競ったのである。破格な帝王、後白河院を頂点として持て囃されたが、武家社会に入って間もなく姿を消してしまう、不思議な芸能である。当時の芸能一般について言えることだが、具体的な姿が伝来しないのが現状であり、とりわけ今様とか白拍子舞は然りである。それを少しでも克服して、でき得る限り当時に近づこうとするには、残された記録を読み解き、それを脳裏に置いての実演、これ以外に方法はない。それに現代感覚を加味する。その意味で、若き所員たちの取り組みは王道を行っているといえよう。
一人でも多くの方が学びの輪に加わって「今様」「白拍子」に親しみ、心豊かな時を共有していただきたい。こういった「古典」の威力は、次の一文に言い尽くされていよう。
「古典とは…人間性洞察の力とその表現の美しさによって、私たちの想いを深くし、心を豊かにしてくれるもの」(「古典の日」宣言)
平成30年8月 朧谷 寿
白拍子研究所所長 朧谷先生より発足3年目を迎えメッセージをいただきました。
早いような、もっと長いこと経っているような気もいたします。
ますます地道に頑張って参りたいと思いますので今後ともお導きくださいますよう、よろしくお願い申し上げます‼︎